第3回 「育成」の本質を考える 世界に誇る、地域のLeading hospitalになるために

第3回
「育成」の本質を考える 世界に誇るLeading hospitalであるために

ミッション

大学付属病院のミッションは「育成」。

ミッションを、その「組織の存在意義」と定義すると、

八王子医療センターのミッションは、究極のところ、「育成」であろう。

「良き医療を提供すること」は当然で、

「そのための人材を育成し地域に貢献する」こと。

これが、地元密着型の大学付属病院のミッションであろう。

2024年、2025年に迫る、「医師」と「病床」の再配置は、

別々の病院に勤めていた医師が、一つの施設に集まる可能性すら意味している。

すなわち、高度かつ標準化された医療が求められる。

八王子医療センターは、「人材育成」の責務を担うことになるだろう。

医師やコメディカルだけではない。

事務系職員の医療経営やサービスマーケティングなども、

地域全体の育成をリードしたいところである。

ミッションが「育成」であれば、

ミッションを達成するために、日々の「利益」を追求することは、

私自身、大学付属病院の教職員として、納得できる。

利益を上げて、「育成」する。

「育成」によって人材が育ち、また利益が上がる。

その利益を、さらなる「育成」に投資して、社会貢献する。

「地域のLeading hospital」。

世界に誇る優秀な人材を「育成」する。そのような組織の一員になりたい。

育成のきっかけ(育成する相手を獲得する)

本気の現地採用が本気の「育成」の元になる。

私の経験では、

「うちに来ないか?」というアプローチから育成が始まった。

救急医療はマンパワー。

地域医療体制の維持には、若いマンパワーの獲得が最重要であった。

また、獲得した人材の「職場満足度」を高めることで、次の人材を獲得した。

私は、部下の「主体性」を、とくに重視した。(→ブログ第17回参照)

加えて、アルバイト先の確保や、2交代制の導入など、生活面を重視した。

全国に目を向け、多くの候補者をピックアップし、

候補者のキャリアプラン、生活環境などのニーズ調査を行い、見合った条件提示を行った。

一般企業では当たり前かもしれないが、

救急医療を守るために、私も、救急部門長として、

人材のリクルートに邁進してきた(→ブログ第18回19回20回21回参照)。

努力して獲得した人材だからこそ、

その後の「育成」を真剣に行うことになる。

もちろん、本部からの人材派遣はありがたい。

派遣された人材に対し、責任もって「育成」することも、支店の使命と思う。

しかし同時に、

八王子医療センターが、今後、地域の「Leading hospital」であるためには、

多くの「Made in 八王子」を育てるべきであろう。

現地採用こそ、今後の繁栄の鍵となる(→ブログ第11回参照)。

育成の本質(まずは上司が自立すること)

苦しい場面の打開策を、部下「本人」に考えさせた。それが「育成」だと思った。

『育成の本質は、職員の自己実現を叶えること』。

しかし、これは、現実的には、非常に難しい。

上司というものは、部下を容易に「否定」してしまう。

理想的な「育成」は、

「俺も(私も)そこそこできる」という感覚(=自己有能感)、

「俺は(私は)やりたいことをやらせてもらっている」という感覚(=自己決定感)

を相手に持たせることであろう。

すなわち、朝起きた時に「今日も職場に行きたい」と思わせること(=心理的安全性の確保)が「育成」であろう。

しかし、これは本当に難しかった。

上司と部下は、必ず利害衝突する。その際は、原則、上司が譲らねばならないと思う。

しかし、上司は、部下を容易に「否定」する。

反発されると、上司は部下を追放したくなる。私も、基本的にはそう思った。

しかし、私なりに、忍耐を重ねた(笑)。

これは、勉強やスポーツの努力とは違う。「見えない努力」であった。

部下を肯定することは本当に難しい。

それは、その前に「自分を肯定する」必要があるからだろう。

私は、トップであるが、スーパーマンではない。かなり普通の人である。

それでも、部下が苦しい場面に遭遇したとき、

それを乗り越える打開策を、部下「本人」に考えさせて上げられる、

余裕のある上司でありたかった(ブログ第17回)。

「自分を信じて、やってみなさい。」と部下に言えるか。

そのためには、私が精神的に自立している(どっしり構えている)必要があった。

すなわち、「育成」に関する私の努力は、

誰からも見えない、「自分の自立(自律)への闘い」でもあった。

育成の文化が根ざせば、組織の目標も達成できるだろう。

ではどうして、そんな孤独な闘いに、私は挑んだのか?

それは、「目的」があったからである。

「断らない三次救急」という自分なりのゴールがあった。

私にとっては、目的があって、相手がいた。

強い組織であるためには、私だけでは何もできない。

「部下の成長」がすべてであった。

同じように、

今後の八王子医療センターの目標が、

「世界に誇る人材育成」なのであれば、

どれだけ思い通りにいかなくても、根気強くゴールに向かうだけである。

自分自身を信じられるか。

そこが、私も含めた八王子医療センターの職員の、分岐点だと思う。