第18回 若手医師の獲得戦略 その1 「部下への献身」について

若手医師の獲得戦略 その1 「部下への献身」について

若い医師はよく働く。

患者さんを診て医学(医療)を勉強したい、という意欲が強い。

したがって若い医師が多い病院や科は、働き手が充足しており、収益性も高い。

では、どうすれば、

若い医師を多く集めることができるのだろうか?

そこに何らかの「方法論」は存在するのか?

以下に、私なりの考えを述べる。

 

若い医師は、

患者さんを診て医学(医療)を勉強したいという意欲が強い。

しかし、患者さんを診ることは、「喜び」である一方で、

人さまの身体を扱うので、それは「責任」であり「リスク」でもある。

それでも若い医師が、果敢にも臨床現場に挑むのは、

ひとえに「役に立ちたい」からである。

早く役に立てるようになりたい、からである。

「献身」は、

自分に不利益が生じるかもしれない状況でも、

相手のことを思って行動すること、である。

若い医師の「情熱」は、まさに「献身」という言葉が当てはまる。

 

さて、

上司としては、誰もが、

部下が活躍し成長できるような環境を作りたい、と思うかもしれないが、

これが、難しい。

なぜ難しいのか。

それは、

部下の情熱(=献身)を守るためには、

上司がそれ以上に、部下に「献身」する必要があるからだと思う。

 

内科、外科、救急科、、、それぞれ、研修の内容は違う。

しかし、共通して言えることは、

若い医師は、上司の「コマ」ではなく、病院や科の「コマ」でもない。

若い医師の成長のために、上司がいる。

明確にしておくべきことは、

病院は、職員の成長のために存在する。

決して、職員が病院のために存在するわけではない。

ということであろう。

この考え方を貫けば、若手は集まり、結果、病院の利益も増えると思う。

しかし、

上司も人間である。好き嫌いがある。

また、上司自身の「自尊の念」が大いに邪魔をする。

人と人との関係である。

必ず、「わかりあえない」ことがある。

いや、「頻繁」に、わかりあえない。

しかも、我々は、分かり合えない際、常に、相手のせいにする。

しかし、それでは、

素晴らしい戦友になれる人物を、容易に、失ってしまう。

つまり、自分の考えを「わからせる」のではなく、

相手の考えを理解する努力、わかろうとする努力が、上司に求められる。

 

もちろん、

上司は、うまれつきの「神様」や「人格者」ではない。

だからこそ、

職場では、「プロの管理職」を徹底的に「演じる」他ないと思う。

無い器(うつわ)を、まるで「有る」ように演じるべきだと思う。

若手医師を多く集める方法論があるなら、

私としては、

上司が徹底して「プロの管理職」を演じることだと思っている。

いったん、

「わかってもらいたい」気持ちをやめて、

「わかってあげたい」気持ちを持つことである。

 

その結果、

部下たちの「精神的安全性」が保たれたなら、

若い医師がたくさん集まり、病院としての社会貢献度が高まるだろう。

また、プロを演じることは、上司が真に成長するチャンスとなるだろう。

この考えを、「育成」をミッションとする病院経営の「根幹」を成すものとして、提案したいと思う。

 

以上、

次回 若手医師の獲得 その2「他医への献身」について に続く。