第20回 若手医師の獲得戦略 その3「ホームページの活用」について

若手医師の獲得戦略 その3「ホームページの活用」について

全国の、若手医師の候補者に対しては、

自施設の魅力について、

どれだけ、「紹介する機会」があるか、が重要になってくる。

おそらく、

500名の候補者に紹介する機会があれば、

そのうち1名か2名は、興味をもってくれるかもしれない。

逆に、

たったの10名にしかアピールできなければ、

その年の勧誘戦線は、ほぼ絶望的と言わざるを得ない。

では、

少なくとも500名の候補者に、

自施設の特徴を知ってもらうためには、

どのような「方法」があるか?

さまざまな手段の組み合わせになるが、

今回は、インターネットの「ホームページ」について、私見をまとめたい。

勧誘戦線において、

インターネットのホームページは、非常に重要である。

どの施設も見栄えの良いホームページを作成している。

しかし、

ホームページを「開設」しただけでは、まったく意味がない。

どれだけ素晴らしいコンテンツを掲示したとしても、

ホームページを開設しただけでは、

まるで、大海原に船を浮かべ、

「こっちを見てーーー」と言っているのと同じである。

相手から、わざわざホームページに入ってくることは、まずない。

大事なことは、

コンテンツを定期的に更新し、

それを「プッシュ型」の広報手段で、「能動的に配信する」ことである。

例えば、当科のHPでは、

この「救命救急センター長ブログ」や、

日々の活動状況報告などを、

コンテンツの「新規更新」がある度に、

Facebookのフォロアー(現在約700名)に「能動的」に配信している。

フォロアーには、

新しい記事が出たので読んでください!

というお知らせが届く。

実際に、記事を読んでもらえたかどうかは判らないが、

少なくとも「お知らせ」は届く。

その記事が面白ければ、他の知り合いにも紹介され、フォロアーが増える。

その結果、何名かの若手医師が、

当科の「新人採用情報」のページに入ってきてくれたら、「目的完了」である(図1)。

図1:HPによる広報戦略

図1:HPによる広報戦略

余談であるが、

「救命救急センター長ブログ」にせよ、

「ポケットガイド」にせよ、

私は、「勧誘」目的で書いているわけではない。

前者は、私自身が、“将来”、八王子医療センターや、

八王子地域の、リーダー的存在になりたいと思っていて、

今のうちから、

「社会の変化」を若い医師らに伝え、

それに対する自分の考えを述べさせてもらっている。

自分の考えを、後から述べるのではなく、

今、述べたものを、実際の行動で、示して行きたいと思って書いている。

「医師 新井隆男のブログ」(2022.1月に移転)
https://araitakao.com/

「ポケットガイド」は、

自分の専門知識を、社会に発信することにより、

少しでも日常臨床の参考にしてもらおうという意図である。

「ポケットガイド」
https://qq8oji.com/news/pg

すなわち、コンテンツそのものは、

「勧誘目的」では無いのだが、

その1本1本を、能動的に投じることにより、

当科を紹介する機会を増やそうとしている。

ところで、記事の新規更新は、

その「頻度」が多ければ多いほど良いだろう。

ただし、それなりに内容のあるものでなければならないので、

「数」と「質」のバランスが求められる。

結論からいうと、

ある程度「質」が保たれ、かつ週に1回程度の更新があれば、

十分に意味のある広報戦略になるのではないか、

と私は思うし、HP制作会社さんからもそうアドバイスされている。

ところが、この「週に1回の更新」が、本当に本当に、大変なのである。

時間がなくて書けない、という要素もあるが、

週に1回、「記事」をあげる「アイデア」が浮かばない。

「書く」ことは、本当に難しい。

私自身、これまで何度も何度も、くじけてきた。

しかし、壁にぶつかっているうちに、

「見えてきた」こともある。

今回は、ここからが、最も言いたいところである。

ホームページに上げる「記事」とは何か?

それは、学術論文ではないので、

客観性より、ある意味、主観性が大事であろう、と私は思う。

医師は、そういう「主観的」記載は、苦手かもしれない。

しかし、

その人物の考え方、人柄、そういう要素を、

オープンにすることにより、

その施設や人物を、身近に感じることができるのが、ホームページの目的であろう。

そのなかで、

「正しい」ことを書こうとすれば、なかなか書けない。

書いても「これが本当に正しいことか」と迷ってしまい、書けない。

しかし「私はこう考えてきました」という、

考えているプロセスを書くなら、それは「事実」だから書ける。

誰しも、普段から、ものすごくエネルギーを注いでいることが、きっとある。

ホームページに「毎週」書けることとは、

そういった、自分の頭で考えて、自分のエネルギーでした「経験」のみであろう。

自分の頭で考えながら、人生を歩くということは、

本当にエネルギーのいることである。

しかし、書くという点からいえば、その事しか、書けない。

私でいうと、

「若手医師の獲得戦略」というテーマなら、

いくらでも書けると言っても過言ではない。

誰かに頼まれたわけでもなく、誰のためでもなく、いつまでも、書き続けるだろう。

同じように、

誰にでも、「ライフワーク」はあるだろう。

書いて良いなら、いくらでも書けますよ、という「自分のテーマ」があるだろう。

あえて、医療にこだわる必要もない。

猫が好きなら、猫のことを、毎日書いてもよい。

中華料理が好きなら、中華料理のことを、いつまでも書き続けてもよい。

そんなこと、どうして書く必要があるのか?

それは、

まず、書きたくて仕方がない、という気持ちがあるから、勝手に書く。

誰の賞賛が欲しいわけでもない。ただ、書きたいから書く。

その「原点」が大事だと思う。

そして、読者の心を掴むのは、そういう記事なのだと思う。

おそらく、

「理想論」では語れない、物事の限界や、

それを乗り越えられない「苦悩」や「人間の弱さ」を表現できるのは、

上辺だけの「専門家」ではなく、

ごく限られた「当事者」のみであろう、と私は思う。

その「当事者」の言葉に、読者は、心打たれるのだと思う。

昨今の、新型コロナウイルス感染症についても、

自称「専門家」が、読み聞きした知識を語っているが、

誰が見ても、その薄さに気が付く。

そのなかで、

本当に、患者さんと共に戦っている「当事者」である医師が、

ごく稀に、記者会見等に登場することがある。

その医師は、他者批判もしないし、あるべき論も言わない。

ただ言うことは、

今、自分も戦っていて、まだ解決策もわからないが、

日々、こんなに「怖い」思いをしている、、、

と、それだけである。

しかし、

そのコメントやその表情に、誰もが、「釘付け」になり、

結果的に、民衆の心は大きく揺さぶられ、社会が「規律・自制」に向かう。

「表現」とは、そういうものなのだろうと、私は思う。

本稿のテーマに戻ると、

たかが、若手医師の獲得戦略であるが、

されど、若手医師の獲得戦略である。

そこに向かって投じる「記事」には、「良い」記事ではなく、

自分が苦しんでいることや、乗り越えたい悩みを、正直に書き綴ることが重要だと、

私は思うし、

そうでなければ、毎週アップすることできないだろう。

以上、まとめると、

若手医師の獲得戦略においては、

自科のホームページを開設するだけでなく、

新しい記事を、能動的に、定期配信することが重要だと思う。

それにより、一人でも多くの若手医師に、

自科の募集広告を見てもらうように、仕向ける必要がある。

ここでいう、記事とは、

「良い記事」ではなく、

週に1回、「量産」できるものが良いと思う。

つまり、

誰の賞賛も求めない、ただ、書きたいから書く、という、

医師の内面的な喜びや悲しみが、率直に書かれているものが適すると思う。

以上、

次回、 ブログ第21回 若手医師の獲得戦略 その4「ウインザー効果について」 に続く。